TOP > 木のまち・木のいえ ネットフォーラム  > 【第1回】 > 幹事からの“ひとこと”

木のまち・木のいえ ネットフォーラム

幹事からの“ひとこと”

藤澤幹事

●「木造住宅の担い手をどう育成するか」が人材育成WGのテーマ
「幅広く木に関連する担い手」すなわち、木を育てる技術者、木を使う技術者、そしてそれをメンテナンスして大切にしていく人材をどう育てればよいのか、を検討するのが人材育成WGのテーマです。たとえば、木を使う人材というと大工に象徴されるわけですが、大工の役割というのは非常に多様化している中、どういう人材がこれから必要になってくるのか、あるいは実際にちゃんと育っているのかどうか、その育っている人材がきちんと職についているのかどうか、というようなことを含めて、データを掘り下げて議論してみようということです。このフォーラムの役割の一つが、現状をきちんと把握するということであって、課題や問題を掘り下げて対策を考えることが重要な役割であると考えます。「木造住宅の担い手をどう育成するか」というのは非常に大きなテーマではありますけれども、幅広く議論をしていくための検討会としてWGをやっていますので、今日は、WGの議論をご紹介するとともに、幹事の皆様のご意見をいただきたいと思います。

加来企画委員

●大工は10年後には大幅に不足、雇用形態も不安定
 人材育成WGで議論している論点については、資料3に整理しています。担い手の現状を把握するという意味から、「大工数の推移と推計値」を見てみると、2005年の値で53万9千人。このままいくと恐らく2020年、ほぼ10年後には30万人くらいに減ってしまうと予測されます。特に95年から2000年の間に職人の数が大幅に減っていますが、それに応じて在来工法における機械プレカット率がどんどん伸びてきている、という相関性が見てとれます。また、「大工職人の雇用形態(賃金支払い形態)」の現状ですが、月払い定額というものが、だいたい全体でいくと30%くらい。すなわちそれ以外の60~70%については、雇用保険や、労災、年金などの健保等が支払われてない雇用形態が多いということです。さらに、「大学等の木造教育や、既存資格者への再教育」のデータを見ると、平成14年時点で、認定訓練校の木造建築科は、ほとんど成立しないくらいのところまで人が減ってきてしまっている。つまり、5人未満の所が全体の40%近くになっていて、5人未満になると補助が受けられないというような実情にあります。一方諸外国では、資料にアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの例を載せていますが、建設産業全体として資金を出して、職人を育成しています。

出江幹事

●日本の伝統技術の伝承を
 我が国の建築というのは、釘を一本も使わずに建築されているというような、世界でもまれに見る伝統技術がありますよね。しかしもうしばらくすると、そういう技術を持った大工さん、棟梁がみな亡くなられて、素晴らしい技術が伝承できなくなる。長い間に培った洗練された文化が失われることに対して、僕は常々残念だと思っています。こうした現状に、国が補助金を出すなりして守っていかないと。いわゆる木造建築士の中でも、特殊な技術者に対しては特別な手当を出すとか、予算組をするようなことをしないと、世界でも類を見ない素晴らしい技術がもうじき廃れてしまうんではないかと危惧しています。

藤本幹事

●建築産業界全体の財産として職人を育てるのは発注者の責任
  職人が非常に払底していくという状況は、皆さんご承知のとおりですが、それをどうするかという問題意識をもったテーマには賛同いたします。先ほどのイギリスの場合、もう10年くらい前から新徒弟制度というのを取り入れて、大手建設企業が、売り上げの一部を人材育成費として中小の建設業の人たちに渡していくという仕組みを行っています。さらに、そこで育った人達をたしか5ランクに、Aクラス、Bクラスという形に分けています。ランクに応じて賃金も明確化することによって、建築業界の中に仕組みが浸透し、職人の能力を理解している職場で働ける仕組みになっているんですね。 日本の大手ゼネコンでも、こういうことをやっていたところがあったらしいのですが、せっかく育てた職人が自分のところに居着かないので、廃止したという話を聞きました。そこがイギリスと違う。イギリスはそんな細かいことを言わないで、建築産業界全体の財産として職人を育てようという目的で金を出していて、自社に人をよこせという発想にしていないところが非常に成熟しているのかなと感じます。要は発注者の責任でこのことをどう捉えるかということを考えてもらわないといけない。仕事がないと人は育たないということです。技術をもった人材を育成し、次の世代に引き継ぐような人を建築産業界に残すのは、ひとつは公共発注者の責任でもある。石川県では、県全体から大工さんを集めて伝統の木造の人たちのグループをつくり、金沢のお城の修復をしてもらっている。当然単価はそれなりにかかるわけですけれども、そういうビジネスチャンスを与える公共発注者が現にいるわけですね。日本の木をちゃんと使って、そういう職人さんに仕事を与えている。コストが高くなっても市民が納得してもらえるようにしていかなくてはいけない。この推進フォーラムもそうしたメッセージを公共団体に向け、どんどん発信していくべきです。

三井所幹事

●地域のユーザーと造り手の関係を育みたい
 今のお話、すごく賛成です。福島県のもう一つの事例として、檀家の人たちが、お寺の本堂の細工をしている若い人をみて、30、40年先、自分たちのお寺をああいう人たちが担ってくれると安心だと感じ、将来の修理のための積み立てをしようという動きにつながっています。自分たちがお金を出して仕事を出すことによって、若い人達が育つという認識も芽生えました。それから、真壁で造ることで、大工さんのいい仕事がユーザーに見えてくるということがあります。真壁ですっきりときれいにおさまっているという技術を、快適だ、すごいなと思わせるところまで、ユーザーに理解させることも必要だと思いました。また、発注者には、自分の地域の棟梁達に仕事に参加してもらう機会をつくって欲しいと思います。そうするとあの人、或いはあの人達のグループの、あの技術で、あの建物ができたんだと地元の人が理解することによって、ユーザーと造り手との関係がしっかりしてくる。造り手が誇りを持てるし、互いに感謝の気持ちもでてくる。職人の仕事のありがたさというのを身近な人が感じられるような、発注の仕方というのを是非仕組んで欲しい思います。木造建築士が三級建築士に過ぎない扱いになっていると資料にありましたが、そう言われるのも、その存在を理解されていない証拠です。木造建築士資格をつくるにあたっては、当時板図でちゃんと仕事ができ、ユーザーも満足するような住宅を造っている熟練した職人がいて、そういう人に資格がないのはおかしい、ということで敬うべき資格として木造建築士ができたはずです。

藤澤幹事

●木造建築士資格の再評価も
 人材育成WGでは、木造建築士の資格を再評価することも取り上げています。木造建築士については、住宅の図面もかけて木材の加工から施工もできることを問う試験問題にはなっているんですが、実際には、それを指導するような体系が全くない。受験資格が2級と同じであるということもあり、最近は年間1千名ほどしか受験しておらず、現在までに1万5千人くらいしか木造建築士を持っている人がいない現状です。木造建築士が設計、木材に関する技能・技術、現場監督という業務に、もっと役割と責任をもって仕事ができるような資格にした方がいいのではないか、というような主旨もあります。

三井所幹事

 真壁で細工をしていける技術、技能を持っている人が木造建築士だという思いでつくった資格だと思うんです。木の性質がわかっていて図面に頼らなくても仕事ができ、建築士が敬意を払える大工です。また逆に大工にバカにされない建築士ももっと多くならなくてはいけない。大工と建築士が互いに理解し合える人達を増やさなければいけないと思います。

有馬代表

●高い倫理観を持った担い手をどう育成するか
今の話を聞きながらちょっと気になっているのは、技能と、いわゆる設計者とちょっと違うのではないかと。特に、設計者というのは、私の理解ではやはり建築士ですから。それは何を意味しているかというと、高い倫理観を持っているということだろうと思うわけですよ、「士」とつけるからには。建築士も医師も国家試験に近いということは、別な言い方をすると手を抜けば一番得するグループなんですよね。お医者さんだって手を抜いた方が得するかも知れない。だけど抜かないって事は、高い倫理観を持っている人だという皆さんの認識があるから、医師というものに対する尊敬の気持ちがあるのではないかなと思うんです。例えば電気の技術士の場合は、電気というのは手を抜いたら絶対に動かないんですよね。その辺りが建築の場合はどうなのかなと感じます。

藤澤幹事

 大工さんでも倫理観を持ってしっかりした仕事をする方もいらっしゃいますし、建築士といわれてもなかなかそうしない方もいらっしゃるわけで、現在の仕事の役割分担がどうなっているのか、それらをまとめたり、分担したりする責任の持ちかたも含めて、12月12日のリレーフォーラムで議論してみたいと思います。

藤本幹事

 木造建築士を国が制定するに当たって、最初は施工管理技士として位置づけて議論してましたが、その後、政治的な話もあって建築士の分類に入ったという事実があるんです。このことをどう考えるか、一応そういう議論も含めてやっていかないといけないのかもしれない。韓国の場合は、木造建築士というのは、伝統木造建築士なんですね。公共発注とかお寺などを改修するときに、そういう人が造ることを義務づけていました。そういう事実もあるということで、日本の場合はどう考えるかっていうことを幅広く議論していただけるとありがたい。

三井所幹事

 倫理観の話は、試験では計れない問題だと思います。教育が担う話がひとつ、それからもう一つは試験を通った後の実績を職能団体側で、あの人は我々がユーザーに推薦するに値する資格者であると、試験とは別のシステムで社会に訴えていくことが必要だと思います。試験だけ通れば技術も倫理観も豊かな感性も備えた、総合的な能力をもつ資格者とすることは間違っていると思います。

中村幹事

●RC中心の大学教育、発注者意識のあり方にも問題が
 二つあると思いますが、一つは大学における設計に関する木造教育の在り方。大学ではほとんど一級建築士を育てるということしか考えておりませんので、そこではRCが中心となっています。木造に関することを教えられる先生もいなければ、生徒もいない。これに対して、私のいた「ものつくり大学」では、1年生の時に毎週午後2時間、必ず演習を行っておりまして、全ての技能を1年間学んで、建築に関わることを全てまず身につけた上で、設計なり次の段階に進む。2年の終わりには木造の小屋くらいは自分で造れるという技能を持った上で、設計を始めるということになっています。そういうことを普通の大学でもぜひやるべきだと思います。例えば若い1年生からインターシップにいかせるなど、具体的なものづくりの現場との関わりをもたせ、自分は社会に出たらどんなことをしたいのかが早くわかるシステムもあるだろうと思います。学校の建築などを手がけるときには、やはり一級建築士でないとならないわけですが、その一級建築士が、全く木造をやったことがない人たちがほとんどなので、その人達に木造を奨励しろといってもとても無理なんですね。    三重県の熊野市という木材の産地で、ある学校を造るという話になりました。市に対して、林業組合などが木造で作ってほしいと要望を出しましたが、実際は、市にしても教育委員会にしても予算の組み方が木造の予算ではなく、RCの予算しかありませんでした。コンペのようなことをやりましたが、その審査も特に木造で作ることは前提にしておらず、設計者も結局は、木造のことを全く知らない設計者でしたので、そこに木造を頼むわけにはいかないと、結局RCの学校ができています。日本の中でも特に木材に関わりの深いまちであっても、学校を木造でつくれないという実情は、もう末期的な症状だと思います。設計者だけでなく、教育委員会にしても、学校計画をする人にしても、全てが木造の意識を持つためにはどうしたらいいのか、という問題に我々は取り組まなくてはいけないと思います。

大橋幹事

●技術を発揮できる場を明確にして、人材育成を検討していくべき
 木造の建物の設計ができるような建築士を育てるという話と、大工さんの教育をどうするかという話は、別だという気がします。例えば、大工さんを抱えているところでは、大学卒ではもう遅いので雇わない、というところもあります。また、現在の業態から言えば、大部分の人はやはりプレカットと共存しなければいけないわけです。そうすると、その中で自分の技術を発揮できるところはどこなのかを見極めないといけないと思います。先ほど三井所先生から、それはやはり真壁じゃないかという話がでましたが、私もそう思います。このように、人材育成の話と平行して、どこに大工さんの活躍の場があるか、活躍の場をどうしたらできるかの議論もしなくてはいけないと思います。また、設計も施工も全部できる人材を育てようとするのか、あるいは、場合によっては、建築士と大工との組み合わせでいい木造を作ろうという考え方もあると思います。例えば、地方では、やはり、大工さんだけでできるようにした方がいいと思いますが、逆に、都会近くであれば建築士も多いので、建築士と施工者の協働という関係も想定しないといけないと思います。このワーキングの中で、それらも議論して欲しいと思います。

  • 『木のまち・木のいえ推進フォーラム』とは
  • 木のまち・木のいえ ネットフォーラム
  • 木のまち・木のいえ リレーフォーラム
  • 木のまち・木のいえ 全国大会
  • 木のまち・木のいえ イベント情報ナビ
  • 国土交通省・林野庁による お知らせワンストップ窓口
  • 国・地方公共団体などによる 助成制度の募集情報
  • フォーラムへの 入会・退会・変更手続き
  • 事務局からのお知らせ
  • 国産材住宅のことなら~ずっと住むなら、やっぱり日本の木~「日本の木のいえ情報ナビ」
  • お問い合わせ
  • 電話 03-3560-2882
  • FAX 03-3560-2878
メールでのお問い合わせはこちら
  • 国土交通省
  • 林野庁
  • http://www.rinya.maff.go.jp/index.html