TOP > リレーフォーラム > これまでの開催状況 > 詳細

これまでの開催状況
| 主催者 | 職業能力開発短期大学校・東京建築カレッジ |
|---|---|
| 開催日 | 2009/12/12 |
| 開催時間 | 14:00~17:00 |
| 会場 | 芝浦工業大学・芝浦キャンパス |
| 開催目的 | 長期優良住宅普及促進法は、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」住宅のありようを定めています。 住宅の維持保全を適切に行うこと、そのための履歴情報の作成、蓄積、活用も重要だとしています。基本的な方針に国産材の活用、その使用に関する伝統的な技術を含め、長期使用に耐える構造などの技術研究開発の推進と普及、そのために必要な人材の育成、資質の向上を掲げています。その担い手像としては、技能・技術だけではなく、関連する情報・ソフト面も含めて総合化する能力、資質を求めているようにも思われます。これら資質を備えもつ人材はどうやれば育つのでしょうか。どこで、誰が育成するのでしょうか。担い手育成14 年の東京建築カレッジが立場を超えて公開講座の場で徹底討論します。 |
| 入場料 | 無料 |
| 参加対象者 | 木材産業関係者、住宅産業関係者、大工・建築士など、一般の方々 |
| 共催団体 | 木を活かす建築推進協議会、東京土建技術研修センター |
| 後援団体 | 国土交通省、林野庁、全建総連、全建連 |
| 出席幹事 | 藤澤幹事、安藤幹事、青木幹事 |
スケジュール
14:00 オープニング
司会:渡邉輝明(東京建築カレッジ 事務局長)
14:05 はじめに(現状の訴え)
巻田幸正(東京土建一般労働組合 中央執行委員会)
古市良洋(全国建設労働組合総連合 書記長)
青木宏之(全国中小建築業団体連合会 会長)
14:30 パネル・ディスカッション
(どこで、だれが、どう育てるか ~長期優良木造住宅の担い手~)
●コーディネーター:藤澤好一(東京建築カレッジ学校長・芝浦工業大学名誉教授)
●パネラー:中野栄吉(番匠塾 塾長)
安藤直人(東京大学大学院 教授)
加来照彦(株式会社現代計画研究所 取締役)
蟹澤宏剛(芝浦工業大学 教授)
16:05 休憩
16:15 まとめ(行政施策として)
木下仁(林野庁林政部木材産業課 課長補佐)
越海興一(国土交通省住宅局住宅生産課木造住宅振興室 室長)
17:00 閉会
1 はじめに -現状の訴え-
○巻田氏
若い人が職人になりたがらないという現状、そして職業訓練校が次々と休校になっていくために職人の育成が困難になっている現状がある。
また、一人前の職人になっても、建設労働者の不安定な賃金、社会保険の不適用、進む職人の高齢化など様々な問題を抱えており、今後の解決策が必要である。
○古市氏
全建総連の職業訓練校が減少し、訓練生が激減している。また、訓練生が10人未満の訓練校が増加し、2割の木造建築科では今年度の入校生が0人と、このままでは休校になってしまう。
また、雇用保険に加入していないと助成が受けられないが、技術者の育成が零細な事業者の責任では無理があり、国、企業、団体が協同で基金を創るなどの必要があるのではないか。
○青木氏
工務店、住宅メーカーなど全ての建築業は大工がいないと商売が出来ない。さらに長期優良住宅の住宅を建てるためには優秀な大工が必要になる。しかし、このまま若い大工が減り続けると、大工の高齢化が進み、大工の数は足りていても今後の担い手がいなくなってしまうのではないか。
ドイツのマイスター制度のような、新しい育成システムが必要ではないか。
2 パネルディスカッション「どこで、だれが、どう育てるか、長期優良木造住宅の担い手」
○藤澤氏(コーディネーター)
木造住宅の新築市場が現在の規模を維持するかについては疑問があるが、欧米の先進諸国と同等に、ストック型社会に移行し,増改築・リフォームへの投資の比率が高まっていく。
木造建築物の新築工事では、プレカット技術が大きく普及したが、増改築・リフォームの現場では、プレカット技術だけでは対応が困難であり、本来大工が備えてきた技術が、今後求められる機会が増える。
しかしながら、年々若い大工就業者が減り、生徒の集まらないため職業訓練校も休校になっている現状では、10年後、20年後の、長期優良住宅を担う技術を持った大工の大幅な不足が危惧される。
建築の専門課程のある大学や高等学校などでも、木造に関する講義数は少なく、木造についての知識やノウハウを習得することは困難な状況にある。
また、木造建築士が設計できる分野や規模は限定されており、現状では3級建築士のような扱いである。しかし、1級、2級建築士の試験内容の大部分が非木造を対象としてるため、それらの資格を有する設計者が木造建築に関する知識を十分に有しているとは必ずしも言えない。
木造住宅による長期優良住宅は、二酸化炭素の排出抑制、伝統的な技術の継承、国産材の利用推進などの観点からも重要であり、そのためにも、住宅の建築、維持保全、流通などを担う人材の育成が必要である。
例えば、林野庁の助成で行われている「緑の雇用担い手対策事業」(別紙)のような事業を、木造住宅の担い手育成においても、取り入れてはどうか。
○中野氏 「なぜ担い手が減り続けるのか」
なぜ工務店、大工の担い手が減り続けるのか、その原因として、多くの工務店が大工を直雇していないこと、重層下請の大工が多いことが挙げられる。
また、大工になりたい若者がいても、育成できる工務店が少なく、受け入れられても訓練指導環境が整っていない状況であること、労働基準法、最低賃金法などに縛られ、技能訓練のための雇用契約ができない状況である。
大学進学が当たり前の時代になって、「とりあえず大学へ」という、高校の進学指導にも問題がある。
大学等では奨学金のように補助金制度があるのだから、大工も職業教育として国から大学生並の補助金を出して貰うわけにはいかないのだろうか。
番匠塾では、入社3~4年の大工に、寺院の山門などを造られており、成果を挙げている。大工を育てるということは、工務店がこれからの時代をどのように生き残っていくかの問題であり、優秀な大工を確保できるかどうかで、工務店のランクが決まる。
○安藤氏 「なぜ地域の木材が使えなくなったのか」
まず、木材を使ってもらうには、ユーザーにできるだけ木に触れ、魅力を知ってもらい、市場を拡大しなければならない。そのためには、文化の継承ももちろん大事だし、さらに適応力、提案力を持って、新しい木材の使い方を、木材産業のほうからも提案し、新しく、インターナショナルな技術を追求していく必要がある。
現在、担い手だけでなく、設計者、工務店でも木材を見分けられない、使い方が分からないということがある。設計、工務店サイドでも木造の流通や情報等の知識を持ってもらいたし、最近では材木やでも木を知らなくなっていて、工務店に木の使い方の提案ができない。木材やその使い方についての知識の共有について、木材サイド、建築サイドが協力していかなければならない。
東大の農学部では、木造建築コースを開設し、木造建築に係わるこれからのリーダーの育成に努めている。社会人が、木と建築を結び付けるにはどうすれば良いのかを考えて、社会人学生として学ぶことが必要だし、また、企業も学びたい人に学べる機会を与える必要がある。
また、戦後に植林された木材がピークにある山が増えている。是非そういう山の木を活用し、若い木をサイド植林していくことが重要である。
工務店の経営に関しては、マネージメントや設備の値段等を経済の観点から見ることにより、構造材がいくら掛かっているのか、木造をどのように組んでいくのかを建築経済として捉えることが、大事なのではないか。
○加来氏 「どんな担い手が望ましいのか」
江戸時代には、大工しかいなかったが、ほとんどの作業を大工、棟梁だけで行い、建物が建てられていた。しかし、現状ではプレカット等の様々な職種の協働でないと建物を建てられなくなってきている。これから育成しなければならない担い手とは分業化の中での協働関係でも、木造住宅を担う全員が棟梁の意識を持ち、それぞれの専門分野でスペシャリストにならなければならない。
今まで職業訓練校が全ての大工を育ててきたわけではなく、職業訓練校ができる前からも工務店、棟梁等が育てていた。しかし、現在ではそのようなことは難しい。欧米では独自の育成システムを行っている国が多い。これを参考に、公共と業界で力を合わせて育成に取り組む必要がある。
また、昔は技能・技術に応じて昇進し、その職に応じて賃金が上がっていたが、現在の大工職はだれが正当に評価しているのか。能力の評価と、そのために必要な教育、経験をしっかりと位置づける必要がある。げんざいでは、大工、設計者、木材技術者等の各職種で様々な研修が開かれているが、これらのスキルアップを全国的に位置づけ、例えば都道府県等が認定するような仕組みを考えられないか。
また、スキルアップした木造建築士を、構造設計一級建築士と同様に四号特例のインセンティブと責任を与えたり、木造技術者マイスターとして位置づける等のことが考えられないか。
中野さんの言われた工務店ブランドの確立には、地域の設計事務所も大きな役割を持っていると思うが、地方に行くほど上手く協働できないのが現状である。今後は、職種、地域を問わず、設計事務所、工務店、木材産業の連携が必要。
○蟹澤氏 「どうすれば頼もしい担い手が育つのか」
大学が木造建築を教えない理由として、昭和34年の日本建築学会での木造禁止決議、また、棟梁に任せておけば細かいところは造ってくれるという考えが世の中にあったことも考えられる。
一方、大工を育てるにはお金がかかり、大工はオープンな技能なので、育てても逃げられてしまう。また、施主からは評価されないので、育成資金は値切られる対象になってしまう。また、設計者、監督者は、雇用されることが前提となっているが、大工は雇用されることはまれで、年功的な賃金要素がないため、経験を積んでも収入が上がらない。
このように見てくると、従来の徒弟(教えない)というシステムもそれなりの理由があった。それは、雇用ではないので賃金が少なくて済むこと、なかなか一人前になれないので弟子に逃げられないこと、そして、世間も職人の技(奥義)を評価してダンピングもされないことである。
しかし、技能とは、プロスポーツと同様に、決して教えられないものではない。大部分が理屈で説明可能であり、最初から正しく体得、習得、修得することができる。例えば、「研ぎ」は最低でも3~4年とも言われるが、私でも正しく練習すればこのくらいには研げる(研ぎ石の違いによる刃の表面写真(電子顕微鏡)を紹介)。良い教材を作成し、育成システムを工夫すれば、育成時間の短縮も図ることができる。
教えた人が損をしないシステムとして、「オープンである技能を」「業界団体等で良い意味で囲い込み」「適正に評価することで、自らの団体等の利益を守るとともにコンプライアンスを徹底し」「公平な条件で競争する」システムを作る必要がある。
例えば、外国人研修・技能実習制度は、実習生である3年間は、雇用関係が発生し、社会保険、労働保険が適用させるが、そのような制度や、日建連が提唱した「連携請負」制度なども参考に、制度設計してはどうか。
3 まとめ ― 行政施策として ―
○木下氏
木材産業としては、木を使ってもらわないとお金が回らない。そして、お金が回らないと人材を含め産業として成り立たない。現在、山には間伐しなければいけない木が沢山ある。しかし、手入れのいき届いていない山が多いのが現状である。このまま放っておくと山の木がどんどん荒れて痩せ細ってしまい、取り返しがつかなくなってしまう。
そのために、建築を含め色々な需要の中で沢山使っていかなければならない。
現在、政策として木材を活かした住宅づくりを進めているが、山側から工務店まで連携して使ってもらうシステムを推進している。また、それを一般の人達に情報として流すことも重要である。
また、国産材には品質のブレがあるため、製品の開発、また、需要にあったものを作ること、品質を明確化していくことでレベルを上げ、より使い易くしていくことが重要である。
今まで木を知らなかった人達に山のこと、木のことを学んで欲しいということで、担い手の育成、人材の育成をしてきたが、これからはさらに進めて、業界同士が手を取り合ってシステムを作っていくことが重要だと思う。
○越海氏
コンクリートや鉄骨では設計、施工分野で技術開発が行われ多くの技術者を育てているが、木造分野では建築学会が禁止したことも影響していると考えられるがパトロンが全然いない。RC造はゼネコンや電力会社、鉄骨造も日本鉄鋼連盟が産業側に立って支えているが、木造では、大学等で研究している人も少ないため、研究を続けていくための新しい技術が出ないという悪循環に成っているのではないだろうか。
今後は、長期優良住宅を普及・促進させるために設計・施工能力が何ステップかは上がるのではないかと考えられ、最終的には長期優良住宅を通じてRC造のレベルまで木造を高められるようにもっていければと考えている。
また、木造建築士を作った最初の目的は大工にも建築士を取って貰うことであった。しかし、現状の受験者数は少なく、年間の木造住宅着工戸数と比較すると合格者の数は全然足りない。足りない部分を一級と二級の建築士がカバーしているのが現状である。しかし、実際、建築士の中で木造を理解している人は少ない。木造建築士が長期優良住宅の担い手になっていってくれればと思っている。
第44期建設政策検討委員会で全建総連の考えている、「設計図が読め、資材の設定・積算・加工ができ、現場管理ができ、戸建て住宅を完成できる労働者」が木造建築士としても理想である。しかし耐震偽装事件以来、建築士の受験資格が厳しくなり、現在では木造系の学科も減り、林学系でも選別され、ほとんどに受験資格がなくなっている。そう考えると、現場技術者・技能者の中から受験者が出てきてもらうことに頼るしかない。
そこで、地域材や地方の街並みデザイン等を試験内容に盛り込み、県単位で実務型の木造建築士を養成し、資格を与えてはどうかと考えている。
●参加者数 161名